(9)明治維新以降の男性名

(1) [〜郎]→[〜お]→「一字名」→?

 

 右のグラフを見てください。これは小学校の卒業生名簿などから4万人分のデータを集めて描いたものです。

 黄色は、[〜郎]です(朗も含む)。明治維新頃は50%ほどが[〜郎]だったのがどんどん減っていきます。しかし今でも4%ほどは、[〜郎]という名前です。たとえば、2017年の「明治安田生命名前ランキング」には88位に「琥太郎」が入っています。

  赤は[〜お]という名前です。「雄」「夫」「男」という漢字を使います。名前が短くなるにつれ、[◯◯郎]から[◯お]に変わって行ったのです。

 青は「一字名」です。1900年頃から女性名に[〜子]が登場し増えていきます。同時に男性名に「一字名」が増えてきます。[一字名]は「男性でも女性でも」という時代になっています。

 

 さて、「現在の名前は」といえば、次は2017年「明治安田生命名前ランキング」のトップ3の名前です。

(男) 悠真 悠人 陽翔    (女) 結菜   咲良   陽葵  

 少し見ただけでは、男の子か女の子かわからない名前が増えています。それはなぜでしょう。

 

 右のグラフは、2005年生まれの男女2000名の名前を「漢字の文字数」で分類したものです。男女とも「2字名」が多数派で、「1字名」「3字名」もあります。ただ大きな違いは、女の子には「ひらがな名」が10%ほどあるということです。

 

 名前に男女差がなくなったのは、最近のことです。下のグラフを見てください。これは、小学校の卒業生名簿を使って「名前の文字数の推移」を表したものです(それらの名簿は『東京都千桜小』(1991),『広島大学附東雲小』(1991),『豊田市挙母小』(1993)を中心に6000名のデータを集積した)

 

 このグラフでいちばんめだつのは、「青色」です。明治初期の女性は、ほとんど「うめ」「はる」のように「かな2文字」だったのです。男性は、「仙太郎」のように「漢字3文字」が中心でした。「甲子三郎」のような「漢字4文字名」もありました。

それが時代とともに均等化していくのです。

 最近生まれた子どもはどんな名前でしょう。

明治安田生命『名前ランキング2017』で「男子読み方ランキング」の上位15位の名前は次の通りです。

 はると そうた ゆうと はるき りく そうすけ みなと あおと ひなた こうき こうせい かなた そうま あおい かいと

「女子読み方ランキング」の上位15位は

 さくら ゆい  あかり めい  はな さな   りお  ひまり こはる あおい ほのか  りこ  みお  さき  みゆ

男女の違いはどこでしょう。

 右のグラフをみてください。これは「呼び名の音節数」です。男性は3音「はると」「そうた」が多く、4音「そうすけ」や5音「こうたろう」もあります。男性名の方が女性名より長いと言えるでしょう。

 女性名は、2音「ゆい」「めい」が目立ちます。もともと、日本の女性名は「2音→例えば[はな]とか」でした。現在の名前は、そんな「2音」に戻っているようです。

 

 また呼び名がどの音で終わるのでしょう。私の持っている「2005年生まれの男性名200人分データ」を見てみましょう。それは幼稚園・小学校の卒業生名簿などから集めたものです。

 1位[〜キ]     2位[〜ト]  3位[〜イ]  4位[〜タ] [〜ヤ]

女性の場合は、以下の通りでした。(→最近の女性名は?)

 1位[〜ナ]  2位[〜カ] 3位[〜ミ] 

 

名前の最後はローマ字で書くと、a,i,u,e,oのどれが一番多いでしょう。

 1位[〜i]     2位[〜a]  3位[〜u]

女性の場合は、以下の通りでした。

 1位[〜a]  2位[〜i] 3位[〜o] 

 

現在の名前の典型は、男性は「はるき」、女性は「はるか」と言えるでしょう。

将来の名前は、どうなっていくでしょう。国際化がすすむことはまちがいないでしょう。

 

アメリカに本拠地を置く[BabyCenter」(→)は、全米の赤ちゃんの名前のランキングを公表しています。そこから「2017年トップ10」をあげると次の通りです。

(男)1 Liam   2 Noah 3 William 4 James 5 Logan 6 Benjamin 7 Mason 8 Elijah 9 Oliver 10 Jacob

(女)1 Emma   2 Olivia 3 Ava 4 Isabella 5 Sophia 6 Mia    7 Charlotte 8 Amelia 9 Evelyn 10 Abigail

 

 もし日本の名前がアメリカナイズしたとすると、[ン(n,m)で終わる名前(ケンとかツトムとか)が増えてくるかもしれません。さて私の予想は当たるでしょうか。他の国の人たちの名付けの様子も[BabyCenter]というサイトで見られます。その概略は次のページです(→)。

 

 しかし、やはり日本の男性名の動向も、日本古来の名前に向くような気がします。[〜郎(朗)]は、1500年前から使われ、500年前には男性名の中心になりました。「日本男子の伝統的な名前」と言ってもいいでしょう。そんな名前が増えてくるような気もするのですが、いかがでしょう。